外国の砂利道を、ドライブしているような感覚だった。無機質な音とともに、不安定なタイヤに揺さぶられるような。それは、揺り篭に乗せられて、眠気を誘われるときと似ていて、現を抜かせれば、意識を失ってしまうかもしれないくらいだ。ことり、そんな音が聴こえそう。首が無意識に下を向いた。

  、ことり。


面倒くさいから数秒待った。無理矢理伸ばした背筋が前へと倒れこんでいることに気づいて、前の大画面自動景色(所謂、まど)に目をむけた。焦点を合わせると、目が開いたことを確認した。  、寝てしまっていたようだ。右を向けば、綺麗な横顔 が見える。光が当らなくとも、何時ものように煌々と輝いていた。
もう一度目を瞑る。体に音が響くほどの大音量の音楽が耳障りになる。それに、ずっと後ろに居たようなバイクのエンジン音が耳について執拗い。そして、すばるの体を纏っている加工製品は鼻につく。

いつからだろうか、アイなんて信じてあげられなくて、仕事ばかりに目を向けていたのは。

会話はまったくない。音楽が上手く遮っている。それが、今は邪魔なのかもしれないが、この二人にとっての間となるものだとも思うのだ。だから、石油の小さな箱の中の私たちにとっては、妙に居心地がいいものを感じる。
もっと、私が執拗に何かを言えば、こんなことにはならなかったのかもしれない。もう、二人とも大人だから何も言わないのは承知している。二人の間に、「詮索」という言葉は一切ない。だからこそ、今までの距離を保てていて、これからも、ずっと、と思っていたほどだった  のに 、

助手席の窓から見えるのは、薄暗くなった空を映えようともしないコンクリートで、窓に反射して映る自分の顔が、見たことのないほど疲れきっていた。

(本当に、最初から既に、疲れていたのかもしれない)





              不器用になるほどにあなたに愛をささげようと思っていたのに、
                 器用になるほどに、あなたに愛をささげようとは思わなかった私を赦して下さい。

もう上手に愛すのは無理です