「あ、りょーちゃん」
「・・・あ、(きた・・)」
「なになに?玄関の隅で」
「いや、あー、・・・こんにちは」
「こんにちは(変なの!)」
「え、あ、と・・・なに?」
「なにって?そっちが先にいたんでしょー!しかもナンカ乙女チックにもじもじしてて!」
「あ、ごめ・・・(お、とめちっく・・・)」
「(今日はやけに素直だ)っていうか、昨日メールありがとうね!」
「え、ええ、み、見たん?」
「だって私にくれたんでしょ!?」
「え、あ、そーやったな、ご、ごめん・・・」
「(なにそれ・・・!)カワイー!今日なんかあったの?いいこと?」
「か、か、かっ可愛いとかゆーな!ボケ!アホ!!」
「ひ、ひどい・・・!(余計におかしい!)」
「(ああ、もう・・・)ごめん、ほんまに、いや、なんか、おかしいな・・・」
「おかしいね?熱?保健室?あ、先輩?苛められた?」
「い、いや、ちゃうちゃう!!!」
「あ、こんな時間!今日バイトだ!また来週の月曜日ね!バイバーイ!」
「ちょ!おい!待って!!!」
「・・・?」
「、ええっと・・・」
「・・・なに?」
「・・・・・・」
「りょーちゃん?」
「こ、れ・・・」
「なに?見えない見えない」
「・・・・・・っ、やっぱやめた!!!」





左手に何を隠してるの

(「え、ちょっと!なに!」「も、ええ!(チョーハズイ!)(俺やない!)」)





きみが放課後玄関からでてくるのをまっていたなんていえるはずがありませんでした。だから、照れ隠しに怒って見せたのだけれど、きみはそれが通じなくて、でも通じてほしくなかった。そんなもどかしい気持ちが、なんだか大好きなんです。そして、そんな強がりなぼくに笑顔で構ってくれるきみもなんだか大好きなんです。昨日送ったイーメール。きちんと見てくれたんですね。返事がこなかったときは、喫驚したけれど、きみのことだから寝てしまったかもしれませんね。(「おたんじょうび、おめでとう」
一回は口で言えればよかったのですが、照れ屋なぼくだから、面等向かっていえないのです。それがぼくだから。そんな自分が今年、きみの住所を睨み見つめることなく、きみの瞳孔をみつめながら「ぷれぜんと」を渡すのです。男同士でしか「ぷれぜんと」を渡しあったことしかないのに、今年、少し自分の皮を剥いで、だいすきなきみに、「ぷれぜんと」を。そんな自分が少しいやだったのです。決められた枠のなかに「じぶん」があったはずなのに、きみにしか自分の皮を剥げないなんて。そんなことをいえば、多分きみは、「それがりょーちゃんだよ、べつに気にしなくていーじゃん」なんて人当たりのいい笑みを浮かべてふふ、と微笑むのでしょう。そんなきみ、今年で十七歳になりましたね。(そうしてだんだん大人になってゆけば、歳も増え、ぼくのしらない君も増えていくんでしょうか)「おめでとう」なんて到底口からはいえないけれど、こんなぼくをこれからもよろしくね。こんなこと、心の中でしか思えないけれど、そんな臆病で実際小心者のぼくだけど、少し窓を開けてみました。風が気持ち良いです。たぶん、その風はきみなのでしょう。だから、心地がいいのです。だから、少しのお礼にと、 ゆびわ、を、(買ったのですが、ハートのフワロスキーなんてガラじゃないですね)(こんなもの渡したら、きっと笑われるでしょう)(だから、少しそんなきみがきらい)(でも、すきな気持ちの方が多いから)(1きみがきらい、でも101きみがすき)(だから、100パーセントきみがすき)
それが照れくさいから、月曜日の朝、きみが玄関の扉をあけたとき、ぼくのプレゼントを受け取ってね。



おたんじょうび、おめでとう。
(ああ、少しなきそうになる)