「精神科にいきなさい」と言われました。私は心が強いはずなのにそういわれました。人間というものからみれば私は、暗くて億劫で穢くて真っ黒なようです。若者言葉でいえば、「超最悪」というものでした。だけれど如何でもよくなりました。そういって憫笑していても、私の存在を穢すだけであり、車の助手席にも座らせてくれないのです。死にましょうか。どこからか聞こえてきました。死にましょう。そういって目の前に、蒼い塗装をされた剃刀が、きらり、と光ります。でも手ではとれません。そこで気づきました。これは夢、夢だった。
きらい。すべてがきらい。こわい。くるしい。ラヂオから聴こえる声が不愉快で仕様がない。冷房が寒くて仕方がない。外が暗くて何も見えない。慣れない。お腹がすく。それが今の私のすべてです。比喩の仕様もありません。気持ちすら空っぽで、今までの私を書こうと思っておりましても、今までの私のすべてがわからないのです。知らないのです。忘れたのです。
では、家族の御噺をしませう。
唐突に、私の叔母は生きています、とでもいいませうか。勝手に人間を死なせたように話せば、ほかの人間が怒るのでそういう言い方はやめておきませう。叔母が笑います。母の母です。母の母から見れば私は孫であり、少しばかり可愛い存在かと思っておりましたが、その微笑みが偽物というものにしか見えないのです。時に怒ります、私に頼んだ葉書をまだ出していないのか、と。お風呂に早く入りなさい、と。怒りますが、笑います。昼食のお弁当を渡されます。それを拒めばまた怒ります。
私には姉がいます。肥えています。短気です。昔は短気という単語を私はいらち、と言っておりましたがそれは昔の話です。ところで私の姉は短気です。肥えていることを知っているのか知らぬか、自覚していないのか、時々暇なときに肥えているということを口に出すと怒ります。だったら痩せればいいのに、と思います。ウエストというものが64センチらしいのです。私はその結果を聞いて驚きました。もちろん嘘をついています。もちろん私の目の前でウエストというものの数字を見せてくれません。実際に見せてくれません。だから嘘なのです。そういえば、姉は怒ります。そうして、「デブはお前だろ!」などと大きな声で言います。肥満しているひとに、肥満していると言われた私はどうすればいいのでせう?少しばかり苦笑しましたが、結局口を開いて私はこういいました。「貴方が嘘をつかなければこんなことにならなかったのに」。





人間の個性を尊重できません
普通の御噺 、いじめの原因とも言えますか